冷えた体がポカポカに温まって、心が少し落ち着いてからお風呂場から出る。
部屋着を着て、髪を乾かそうとタオルに手を伸ばしたとき、ガラガラガラと扉が開いた。
「……あ、悪い」
「え……ううん」
開けたのは兄だった。
顔を合わせたのがとても久しぶりで、驚いてそのまま固まってしまう。
「洗濯機……」
「あ、ご、ごめんなさい、さっき回しちゃった……」
怒られるだろうか、それとも殴られる?
言葉にできない恐怖に襲われて、目をぎゅっとつぶった。
「……?」
でもいくらたっても、心臓が止まりそうな怒鳴り声も、骨が折れてしまうんじゃないかと思うような拳が飛んでくることもない。
不思議に思ってチラッと薄目を開いて兄を見ると、感情を悟らせない表情で、ただそこに立っていた。
「……別に、オレが帰ってくるのが遅かったから」
それだけ言うと、扉を閉めて出て行ってしまった。
最近、というか兄が大学生になったときくらいからだろうか、私への接し方が変わった。
いや、きっと私だけじゃない、私たち家族への、だ。
家に帰ってくることがすごく減った。
帰ってきても、ほとんど誰とも喋らなくなった。
そして一番変わったのは、私に怒鳴ったり、殴ることがなくなったことだ。
少なくとも、兄が大学生になってから一度もない。
何かあったのだろうか。
母はなにか聞いているかもしれないけれど、私に話してくれることはないだろう。
怖い思いをしないですむのも、痛い思いをしないですむのも、もちろん嬉しい。
だけど、それがなくなったからといって、仲が良くなったわけじゃなかった。
それどころか、心は前よりももっと離れている気がする。
……ちょっと心配だな、なんて。
洗濯機から音楽が鳴って、終わったのだと知らされる。
私がどれだけ考えたって、兄の気持ちがわかるわけじゃない。
せっかくモヤモヤしていた気持ちが少しは晴れたかと思ったけれど、なかなかうまくいかないなあ……
結局あれやこれや考えながら、洗濯物を干すことになった。
部屋着を着て、髪を乾かそうとタオルに手を伸ばしたとき、ガラガラガラと扉が開いた。
「……あ、悪い」
「え……ううん」
開けたのは兄だった。
顔を合わせたのがとても久しぶりで、驚いてそのまま固まってしまう。
「洗濯機……」
「あ、ご、ごめんなさい、さっき回しちゃった……」
怒られるだろうか、それとも殴られる?
言葉にできない恐怖に襲われて、目をぎゅっとつぶった。
「……?」
でもいくらたっても、心臓が止まりそうな怒鳴り声も、骨が折れてしまうんじゃないかと思うような拳が飛んでくることもない。
不思議に思ってチラッと薄目を開いて兄を見ると、感情を悟らせない表情で、ただそこに立っていた。
「……別に、オレが帰ってくるのが遅かったから」
それだけ言うと、扉を閉めて出て行ってしまった。
最近、というか兄が大学生になったときくらいからだろうか、私への接し方が変わった。
いや、きっと私だけじゃない、私たち家族への、だ。
家に帰ってくることがすごく減った。
帰ってきても、ほとんど誰とも喋らなくなった。
そして一番変わったのは、私に怒鳴ったり、殴ることがなくなったことだ。
少なくとも、兄が大学生になってから一度もない。
何かあったのだろうか。
母はなにか聞いているかもしれないけれど、私に話してくれることはないだろう。
怖い思いをしないですむのも、痛い思いをしないですむのも、もちろん嬉しい。
だけど、それがなくなったからといって、仲が良くなったわけじゃなかった。
それどころか、心は前よりももっと離れている気がする。
……ちょっと心配だな、なんて。
洗濯機から音楽が鳴って、終わったのだと知らされる。
私がどれだけ考えたって、兄の気持ちがわかるわけじゃない。
せっかくモヤモヤしていた気持ちが少しは晴れたかと思ったけれど、なかなかうまくいかないなあ……
結局あれやこれや考えながら、洗濯物を干すことになった。



