またその話かと思って、すぐに身を隠す。
このときはモデルの仕事をしていることで有名な友利のことしか知らなくて、凛月のことは知らなかった。


小柄な体形、肩まであるさらさらな髪、優しい声。
かわいい子だなと思った。


友利たちには悪いけれど、やっぱりかわいい子にはかわいい子が一緒にいるんだなーと無意識に考えるくらいには。


「あー、それすごい噂になってるよねー」
「え、そうなの?」
「凛月はそういうのに疎いもんね」


張本人の俺がいることにも気がつかずに、すらすらと会話は続いていく。
いつまた馬鹿にされるんだと気が気じゃなかった。


でも凛月は。


「そっか。でも、女子の格好も似合うなんてすっごく綺麗な人なんだろうなあ……羨ましいな」


なんて花が綻ぶように笑って言うから。


彼女にとっては何気のない言葉だったのかもしれない。
俺が聞いてるなんて知らないわけだし、きっと覚えてないと思う。


でも、ずっと否定されて馬鹿にされていた中で、初めて聞いた肯定の言葉だったから。


その言葉に救われた気がしたんだ。


それからずっと凛月のことが気になってた。
でも話しかける機会なんてなくて、全然勇気も出なくて。

だからずっと知らなかった、彼女が悩んでいたことも。