「いやさすがに女装はないだろ」


高校1年の夏。
この言葉が聞こえてきたとき、やっちまったなと本気で落ち込んだ。


ずっと会えていない姉との写真。
最後に撮ったのが、『かわいくさせて!』と姉が俺に女装をさせたときのものだった。

俺にとってはお守りで生徒手帳に入れていたのに、うっかり落としてしまうんだから自業自得だ。


高校生になって成長したからか、今までは『女子みたーい』と言われていたのに急にモテはじめた。

そのおかげで俺が女装したという噂はすぐに広まって、学校中で好奇の目にさらされた。


「実はそういうの趣味だったりするんじゃねーの?」

「ねえ、文化祭とかでメイドの恰好してくれないかな」


どこに行っても、誰に会ってもその話。
いいように話していても、何を考えているかなんてすぐわかる。


さすがに疲れて教室を離れ、一人で廊下を歩いているとき。


「あ、凛月、知ってる?学校一の美形が女装してたって話」

「ううん、初めて知ったよ」


初めて凛月のことを知った。