夜明け3秒前

酷い人もいれば、優しい人もいる。
私のことが嫌いな人もいれば、私のことを愛してくれる人もいる。


当たり前のことだけれど、ずっと気づかなかった。
殻に閉じ込められて、閉じこもって……きっと視界が狭くなっていたんだ。


私が生きてきた小さな世界。
苦しくて辛くて大変だったけれど、その世界で過ごしていなかったらきっと今の私はいなくて。


「……凛月」


隣に立っていた流川くんにふと声をかけられるのと同時に、優しく目元をなでられた。


「っ、流川くん?」


急に触れられてドキドキする。
でも、彼がどうして急にそんなことをしたのかすぐにわかった。


「……わ」


自分でも気づかないうちに泣いていたみたいだ。
ぽたぽたと涙がこぼれるから、手で拭いながら彼に顔が見えないように背を向ける。


「ご、ごめんね!なんか感動しちゃって……あはは、私ほんと泣き虫になっちゃったなーなんて」


恥ずかしいのを笑って誤魔化す。
本当に私はよく泣くようになってしまった。

前まではずっと泣けなくて泣きたいくらいだったのに。


お願いだから止まって!と願っていると、優しく頭を撫でられた。
誰に、なんて流川くんしかいない。

でも反射的に振り向いてしまって、そのまま抱きしめられた。