夜明け3秒前

お昼ご飯を食べてホテルに着くと、前と同じようにキャリーケースを預ける。
受付のお姉さんが私のことを覚えていてくれたみたいで、「楽しまれてますか?」と話しかけてくれた。


話し上手のお姉さんの話を聞くのは楽しくて、私もこれだけのコミュ力があれば……なんて心の片隅で思う。


そのあと流川くんと話して、海へ行くことになった。


「まだ遊泳期間中らしいからいいなって思って。凛月、海初めて見たって言ってたから」

「ほんと?嬉しい!行ってみたい……!」


彼がそうやって考えてくれたのも、海に行けると言うのも嬉しくて舞い上がる。
海水浴場はすぐそこらしく、歩いて5分もかからなかった。



「わあっ……!すごい綺麗……」


駅からやホテルからは見ていたけれど、こうして砂浜に立つと海というのを全身で感じられて感動する。

青い海、青い空、白い砂浜。
月並みな表現になってしまうけれど、本当にその言葉の通りで驚いた。


お盆を過ぎているけれど、たくさんの人が泳いでいて賑やかだ。
小さな子どもも、私と同い年くらいの子も大人も、みんな思い思いに過ごしていて楽しそう。


そして、遠くに見える地平線。
海も空も、ずーっと遠くまで続いているのだと実感する。


「……広いなあ」


私が思っていたよりもずっと。
この旅行に来て、この景色を見て、自分がいかに狭い世界で生きていたのか気づいた。