「……あ、ええとなんで……びしょ濡れだったか、の話なんだけど」
「うん」
流川くんは優しい顔でこちらを見ていた。
でもやっぱり、その話を彼にするのが恥ずかしく思えて、目をそらす。
視線の先には、生垣が風に吹かれてさわさわ揺れていた。
綺麗な緑色に太陽の光がキラキラと当たっている。
こんな話をして、引かれたりしないだろうか。
笑われたり、馬鹿にされたりしない?
考えれば考えるほど、不安な気持ちが膨れ上がっていく。
話し出したのは私なのに、言葉を紡げなくてどんどん言い出しにくくなる。
ああでも、この話を麻妃にする方が無理だな。
これ以上、彼女を巻き込みたくない。
……確かにそう思っているはずなのに、私は麻妃から離れたくないと思ってる。
とんでもない矛盾だ。
言葉にして吐いてしまえば、楽になるだろうか。
ぎゅっと両手を胸の前で握る。
何歳かなんて覚えてない頃、兄に教えてもらったおまじない。
『ぎゅーってしたら、勇気でるから。おれもパワー凛月にあげる!』
結局兄も私のことが嫌いな家族の一人で、温かい思い出なんてほとんどないけれど。
今でもこうしておまじないをしてるなんて言ったら、馬鹿にされるだろうか。
それでも不思議と、愛されていた記憶とは忘れられないもので、力になるのだ。
「……水、かけられたんだ、トイレで……私、クラスの子に、その、あんまり好かれてなくて」
自分でも驚くほど声が小さくて震えていた。
でも、ひとこと言葉がでてくると、重い石を肩からおろしたように気持ちが軽くなった気がする。
「……そっか」
流川くんは驚きもせず、それ以上聞きだすようなこともしなかった。
遠くで部活動中の部員の声が聞こえるだけの、静かな時間が流れる。
だけど今更急に不安になって、
「……引いた?」
なんて聞いてしまう。
自分で話すと決めておきながら、本当に心が弱くて嫌になる。
「……俺、最近までよく女に間違われてたんだ。男らしくないって笑われて、よく馬鹿にされてた」
「え?」
流川君の話の意図が読めなくて、思わず顔を向けると、また目が合う。
「引いた?」
少し不安そうに目が細められて、胸がぎゅっと苦しくなる。
「……ううん」
そう言うと、彼は安心したように表情を緩めて目線を空に向けた。
ああ絵になるな、と思った。
「うん」
流川くんは優しい顔でこちらを見ていた。
でもやっぱり、その話を彼にするのが恥ずかしく思えて、目をそらす。
視線の先には、生垣が風に吹かれてさわさわ揺れていた。
綺麗な緑色に太陽の光がキラキラと当たっている。
こんな話をして、引かれたりしないだろうか。
笑われたり、馬鹿にされたりしない?
考えれば考えるほど、不安な気持ちが膨れ上がっていく。
話し出したのは私なのに、言葉を紡げなくてどんどん言い出しにくくなる。
ああでも、この話を麻妃にする方が無理だな。
これ以上、彼女を巻き込みたくない。
……確かにそう思っているはずなのに、私は麻妃から離れたくないと思ってる。
とんでもない矛盾だ。
言葉にして吐いてしまえば、楽になるだろうか。
ぎゅっと両手を胸の前で握る。
何歳かなんて覚えてない頃、兄に教えてもらったおまじない。
『ぎゅーってしたら、勇気でるから。おれもパワー凛月にあげる!』
結局兄も私のことが嫌いな家族の一人で、温かい思い出なんてほとんどないけれど。
今でもこうしておまじないをしてるなんて言ったら、馬鹿にされるだろうか。
それでも不思議と、愛されていた記憶とは忘れられないもので、力になるのだ。
「……水、かけられたんだ、トイレで……私、クラスの子に、その、あんまり好かれてなくて」
自分でも驚くほど声が小さくて震えていた。
でも、ひとこと言葉がでてくると、重い石を肩からおろしたように気持ちが軽くなった気がする。
「……そっか」
流川くんは驚きもせず、それ以上聞きだすようなこともしなかった。
遠くで部活動中の部員の声が聞こえるだけの、静かな時間が流れる。
だけど今更急に不安になって、
「……引いた?」
なんて聞いてしまう。
自分で話すと決めておきながら、本当に心が弱くて嫌になる。
「……俺、最近までよく女に間違われてたんだ。男らしくないって笑われて、よく馬鹿にされてた」
「え?」
流川君の話の意図が読めなくて、思わず顔を向けると、また目が合う。
「引いた?」
少し不安そうに目が細められて、胸がぎゅっと苦しくなる。
「……ううん」
そう言うと、彼は安心したように表情を緩めて目線を空に向けた。
ああ絵になるな、と思った。



