夜明け3秒前

私きっと邪魔になっちゃうし、ここから離れた方がいいよね。
流川くんからは『俺のそばから離れないで』って言われたけれど……


さすがにこれは例外だよね。
ささっと静かにその場を離れる。


涙が引いてくれるのを待ちながら大きな会場を歩く。
さっきより慣れたとはいえ、やっぱりヒールの靴って歩きにくいな。


「……わ」


そんな状況でも思わず声が出てしまうくらい、視界に入ったスイーツはかわいいものだった。
こんなの見たことない。


動物の形をしてる……
あ、こっちは桜かな?


「ねえ、綺麗なお嬢さん。今1人?」


目の前のスイーツに夢中になっていたから、近づいてくる足音に気づかなかった。
「ねえ」ともう一回声をかけられて顔を上げる。


「え、えっと……私、ですか?」

「君以外に誰がいるのさ。うんうん、ほんとにかわいい顔してるね」


いつの間にか隣に立っていた男性は、楽しそうに笑っている。
私よりも年上……かな?

でも、何と言うか……チャラチャラしてる人だ。
かっこいいし、きっとモテるだろうけれど……


「……え、えっと」


こんなこと今までなかったし、恐怖と緊張で体が固まる。
走って逃げる?

……ダメだ!今ヒール履いてるから走れない!