沈黙が流れて、空気が悪くなってしまった気がする。
何か喋らないと、と思っても、会話のレパートリーなんてなくて。
びしょ濡れになった訳、話したほうがいい……?
いやでも、話すにしてもすごく話しづらい空気にしてしまった……
もう少し、当て触りのないこと……
……あ、ある!
まだ言ってなかった、大切なこと!
「あの、自己紹介ってしてなかった、よね……?」
流川くんの様子をうかがうと、ああ、と反応してくれる。
にこっと微笑むと、
「でも俺知ってるよ、佐藤凛月さん、だよな?」
と聞かれた。
私の名前、それもフルネーム。
人気者の彼がなんで、話したこともない私の名前を知っているんだろう。
「うん、そうだけど……まさか知ってるとは思わなかった」
「はは、それを言ったら凛月だってそうだよ。俺の名前、知ってると思わなかったな」
おかしそうに笑われて、そうだろうかと疑問に思う。
「流川くんはかっこよくて性格もいいって有名だから。きっとみんな知ってるよ」
それこそ、この学校なら誰でも。
友達が麻妃しかいなくて、うわさに疎い私でも知っているんだから、おかしいことじゃないと思う、たぶん。
「嬉しいけど、なんか恥ずいな。じゃあ、凛月もそう思ってくれてたり、する?」
「えっ!?」
突然そんなことを聞かれて言葉が詰まる。
私、私は……
自然と目線が合って、離せなくなる。
「う、うん……そう、思う」
たじたじになりながら答えると、流川くんは嬉しそうに笑った。
顔については、一般常識でどこからがかっこいいに入るかわからないけれど、綺麗な顔で整ってるなと思う。
性格がいいかどうかなんて、愚問だろう。
さっき会ったばかりの私に、タオルを貸してくれるばかりか体操服まで貸してくれて、飲み物まで奢ってくれたのだ。
これで性格が悪いなら、この世界はきっと悪いひとばかりになってしまう。
「あ、そういえば下の名前で呼んでよかった?俺、馴れ馴れしくない?」
不安そうに聞かれて、思えば「凛月」って言われてたと気づく。
「ううん、大丈夫だよ、凛月で」
麻妃以外に名前で呼ばれることが少ないからか、胸が温かくなる。
先生やクラスメイトには苗字で呼ばれるし、家族にはいつも「あなた」とか「お前」とか「ブス」とか……
考えてたら悲しくなってきた、やめよう……
「よかった、じゃあ、凛月で」
「うん」
そういえば、馴れ馴れしくないか不安になるなんて、私とは真逆だなあ。
流川くんは確かにフレンドリーというか、パーソナルスペースは狭そうだ。
だけど、不快になるかと言われればそうじゃない。
気を遣って話してくれているんだろうなって思う。
今はもうだいぶ力を抜いて話すことができていた。
私の勘違いじゃなかったら、さっきより空気が良くなった気がする。
彼に話しても、いいだろうか。
会ったばかりなのに、流川くんのことを何も知らないのに、話しても大丈夫だろうか。
迷っている気持ちは確かにあるのに、私は何故か口を開いていた。
何か喋らないと、と思っても、会話のレパートリーなんてなくて。
びしょ濡れになった訳、話したほうがいい……?
いやでも、話すにしてもすごく話しづらい空気にしてしまった……
もう少し、当て触りのないこと……
……あ、ある!
まだ言ってなかった、大切なこと!
「あの、自己紹介ってしてなかった、よね……?」
流川くんの様子をうかがうと、ああ、と反応してくれる。
にこっと微笑むと、
「でも俺知ってるよ、佐藤凛月さん、だよな?」
と聞かれた。
私の名前、それもフルネーム。
人気者の彼がなんで、話したこともない私の名前を知っているんだろう。
「うん、そうだけど……まさか知ってるとは思わなかった」
「はは、それを言ったら凛月だってそうだよ。俺の名前、知ってると思わなかったな」
おかしそうに笑われて、そうだろうかと疑問に思う。
「流川くんはかっこよくて性格もいいって有名だから。きっとみんな知ってるよ」
それこそ、この学校なら誰でも。
友達が麻妃しかいなくて、うわさに疎い私でも知っているんだから、おかしいことじゃないと思う、たぶん。
「嬉しいけど、なんか恥ずいな。じゃあ、凛月もそう思ってくれてたり、する?」
「えっ!?」
突然そんなことを聞かれて言葉が詰まる。
私、私は……
自然と目線が合って、離せなくなる。
「う、うん……そう、思う」
たじたじになりながら答えると、流川くんは嬉しそうに笑った。
顔については、一般常識でどこからがかっこいいに入るかわからないけれど、綺麗な顔で整ってるなと思う。
性格がいいかどうかなんて、愚問だろう。
さっき会ったばかりの私に、タオルを貸してくれるばかりか体操服まで貸してくれて、飲み物まで奢ってくれたのだ。
これで性格が悪いなら、この世界はきっと悪いひとばかりになってしまう。
「あ、そういえば下の名前で呼んでよかった?俺、馴れ馴れしくない?」
不安そうに聞かれて、思えば「凛月」って言われてたと気づく。
「ううん、大丈夫だよ、凛月で」
麻妃以外に名前で呼ばれることが少ないからか、胸が温かくなる。
先生やクラスメイトには苗字で呼ばれるし、家族にはいつも「あなた」とか「お前」とか「ブス」とか……
考えてたら悲しくなってきた、やめよう……
「よかった、じゃあ、凛月で」
「うん」
そういえば、馴れ馴れしくないか不安になるなんて、私とは真逆だなあ。
流川くんは確かにフレンドリーというか、パーソナルスペースは狭そうだ。
だけど、不快になるかと言われればそうじゃない。
気を遣って話してくれているんだろうなって思う。
今はもうだいぶ力を抜いて話すことができていた。
私の勘違いじゃなかったら、さっきより空気が良くなった気がする。
彼に話しても、いいだろうか。
会ったばかりなのに、流川くんのことを何も知らないのに、話しても大丈夫だろうか。
迷っている気持ちは確かにあるのに、私は何故か口を開いていた。



