夜明け3秒前

流川くんは驚いて、お姉さんがいることを信じられないのか体が固まっていた。
でも、私もすっごく驚いてる。


部屋にこもって、長い間会ってないって聞いた。
でもそっか。


この前、連絡が返ってきたって言ってたから。


「な、なんでここに……」

「ふふ。千那がパーティーに参加してるって聞いたから、会いにきたの」


優しい表情で微笑むお姉さんは、長い間部屋でひとりぼっちだった人だなんて考えられない。
それにその笑い方、本当にそっくりだ。


「……それなら、連絡してくれたって」
「ごめんね。驚かせたかったの」


にこにこと笑うお姉さんと、どこか苦しそうに唇を噛む流川くんは対照的だった。
でも、どんどんお姉さんの表情も崩れていく。


「……本当に、ごめんね千那。ずっと、長い間……」

「謝らないでよ、姉ちゃんは悪くない」

「……じゃあ、ありがとう千那」


そう言うと、お姉さんの瞳からぽろぽろと涙がこぼれていく。
それを見た流川くんは静かに俯いた。

ぽたぽたと涙が雨のように床へ落ちていく。
お姉さんが流川くんの方へと駆け寄ると、ぎゅっと優しく抱きしめた。

流川くんもお姉さんの背中へと腕を回す。
その光景は、私にはあまりにも眩しくて。


「……よかった。俺、姉ちゃんに嫌われたんじゃないかって、ずっと……」

「……千那のこと嫌うわけないでしょう」


2人が愛し合って大切に想い合っていることが痛いくらい伝わった。
優しくて、温かい光景。


思わず私まで泣いてしまいそう。


よかった、ほんとによかった。
返事がきただけじゃなく、こうしてまた会えて。


……家族って、姉弟っていいな。
すごく嬉しいのに、自分はそうではないのだとどこか寂しい。


でも、前みたいな思考にはならないから。


「……よかった」


ちゃんと心から祝福できる。