夜明け3秒前

サラダにお肉にお魚にスープ……
つまみ食いをするみたいに、ほんの少しの量をとっていろいろな食べ物を食べる。

おしゃれなドリンクも飲むとお腹もいっぱいになってきて、次はデザートでも見に行ってみる?と彼が話す。
パーティーも終盤になってきたし、そうしようと口を開いたとき。


「千那」


流川くんの名前を呼ぶ、綺麗な声が耳に届いた。
周りは少しうるさいくらいにざわざわしているのに、その声はすっと耳に入ってくる。

声がした方へ振り向くと、とても綺麗な女性が立っていた。
紺色のドレスを着こなして、私たちを、隣の流川くんを見ている。


この女性……間違いなくこの会場で一番きれいだと思う。
同性の私でも見惚れてしまうくらいに。


初対面のはずなのに、会ったことがある気がしてしまうのはどうして?
そんな疑問はすぐ解消された。


この人、すごく流川くんに似てるんだ。
特に、女装していたときの流川くんに。


それに、もう少し幼かったけれど、流川くんと一緒に写ってた写真の人とそっくり。
だからつまりこの人は、流川くんの ーー


「……姉ちゃん……?」