夜明け3秒前




「ど、どうしよう……!」


パーティー当日の夜。
私は1人、自分の部屋で鏡とにらめっこしていた。

麻妃が選んでくれた、綺麗なワインレッド色のカクテルドレスを着て、髪の毛を結んで。

ずっと練習していたメイクをして、最後に流川くんがプレゼントしてくれた月のイヤリングをつけて準備ができたら、途端に不安になってきた。


痣が消えてからも長袖以外の服を着たことがなかったから、腕や首回りがスース―して落ち着かない。

それに、たくさん練習したとはいってもメイクが変じゃないか不安だし……
というか、こんなに頑張っておしゃれして恥ずかしくなってきた……!


かわいくない私がこんなことしても意味ないんじゃ……
これが麻妃だったら絶対似合ってるのに……

わーっ、ダメだ!
モヤモヤ考えてネガティブになっちゃう!


部屋から出たくなくなってきた……


もう出発する時間も近づいてきているのにどうしよう……!
頭を抱えていると不意に携帯が鳴る。

見てみれば麻妃からだった。
準備が終わってすぐに、写真を撮って連絡していたのをすっかり忘れてた。


『は?マジかわいいじゃん!メイクもドレスも似合ってる!会場で変な男に絡まれないように、流川から離れないでよ』


怒りマークがついているのが気になるけれど……
まさか麻妃に褒めてもらえるとは思わなかった。

なんだか嬉しくて笑ってしまう。
不安な気持ちが溶けて、気分が上がる。

それにしてもまた変なこと気にしてるなあ……


って大変だ……!
時計を見て立ち上がる。


もう出発する時間だ、遅刻するわけにはいかない。
バッグを持って、急いで1階へ下りた。