夜明け3秒前

なぜかそうした方がいいような気がして、もう一度大きな声で名前を呼ぶと彼はすぐに体を起こした。
私も起き上がろうとしたけれど力が入らない。


すると、流川くんがそっと手を引っ張って起こしてくれた。
私よりも体温の高い手のひら。

さっき触れられたことを意識してしまって、全然熱が引かない。
ど、どうしよう……頭真っ白で……


「……ごめん、凛月」
「う、ううん……」


それは何についての謝罪なの……?
あの体制になったこと?唇に触れたこと?

お互い目を合わすこともなく、重い空気が流れる。
すごく気まずい……というよりも、どんな風に接したらいいかわからない。


「……驚かせたよな、平気?」
「だ、だいじょうぶ」
「ほんとごめん、怖がらせるようなことして」


その言葉を聞いて彼の方を見た。
あまりにも辛そうな、苦しそうな顔をしていて驚く。


どうしてそんな顔をするの……
確かに驚いたけど、ドキドキしたけど。

嫌だったわけじゃ、怖かったわけじゃないのに。


ぐっと力をこめて笑う。
彼に私の気持ちがちゃんと伝わるように、目一杯。


「ほんとに大丈夫だよ!流川くんは悪くないから、謝らないで」

「……っ凛月」