何か話したほうが不自然じゃないかな、なんて考えていると、「凛月」と優しい声で呼ばれる。


「ソファーに座って待ってよーか」
「え、う、うん」


座り心地のいいふわふわのソファ。
腰掛けるとぽふんと沈む。

いつもは座っているだけで癒されるけれど、今は隣にいる彼を意識してしまってそうにはいかない。


「……食欲ある?もし無理そうなら俺からじいちゃんに言うよ」


心配そうに聞かれて、ドキドキしている自分が恥ずかしくなった。
流川くんの態度は普通だし、それも昨日のことを気にして案じてくれているだけなのに。


「……ううん。昨日よく眠れたから、大丈夫だと思う。それに、すっごくお腹空いてる」


えへへ、と自分のお腹を触る。
少なくとも食べたくないとは思わないし、きっと大丈夫だ。


「そっか、安心した。でも、もし辛かったら無理しないで言ってな」

「うん。ありがとう」


彼の優しさが心に沁みて温かい。
嬉しくなって、気分が上がってしまう。


「流川くん、昨日は本当にありがとう。なんかね、すっごい楽になった」


自分の気持ち、悩みを話して聞いてもらう。
それだけでこんなに違うなんて思わなかった。

気分が明るい。
家族のことを考えても、前みたいな思考にはならない。


「ううん、俺話聞いただけだし。でも力になれたなら嬉しいな」

「ふふ、すっごく助かったよ」


彼と話しながら、『あれ……今のこの感じ、前みたいで自然じゃない!?』と一安心。


「凛月、ここ寝ぐせついてる」


でも、流川くんがおかしそうに笑って、私の髪の毛に触るから。


「えっ!?」


驚いて声を出してしまうし、体は大げさなくらい跳ねるし。
体温が急上昇して、やっぱりダメだ……!と焦る。


「ふふ、顔真っ赤」


でも、彼はそう言って愛おしそうに見つめてくるから、何も言えず動けなくなってしまう。

な、なにこれ……どうしたらいいの……!?


「2人とも待たせたな。ご飯にしよう」


ピンチを救ってくれたのは清さんで、流川くんの手はそっと離れた。