ぱちっと目を開けると、流川くんが目の前にいた。
綺麗な顔ですやすやと眠っている。


昨日泣いて、そのまま眠っちゃってた……?
まだ完全に覚醒していない頭で考えるけれどよくわからない。


一旦ベッドから起き上がろうとして気がつく。
私の左手と彼の右手が繋がれていることに。


……え?ここは私の部屋で、私のベッドで……
でも、流川くんと一緒に寝てて……?


「……わああっ!?」


そこでやっと今の状況を理解した。
驚いて、彼はまだ眠っているというのに大声を出してしまう。


「……んん」


ああ、起こしちゃったかも……!
でも何もできずに、彼の目がゆっくり開くのと同時に目が合う。


「……おはよ」
「おっ、おはよう……」


寝起きの声で挨拶をされて、反射的に返す。
繋がれていた手がそっと離れて安心したけれど、残念だなとも思ってしまう。

流川くんはまだ寝ぼけているのか、何もしゃべらずにじーっと私を見ていた。
それが無性にドキドキしてしまって、顔が熱い。

すぐに耐えられなくなって、慌ててベッドから出る。
ちょっと転びそうになったけれど、すんでのところで持ちこたえた。


「え、えーっと……昨日はごめんね、だいぶ迷惑かけちゃったみたいで……」

「んーん、全然いいよ」


起きたばっかりだからか、彼の雰囲気はいつにも増して柔らかい。
すごくふわふわしてる。


「……よく眠れた?」


三度目の彼の問いにドキッとする。
だけど。


「……うん、すっごく」


今回は『嘘は言ってない』なんて言い訳も必要ない。
夢も見ず、本当にぐっすり眠れた。


こんなに目覚めがいい日なんていつぶりだろう。