夜明け3秒前

「で、も……幻滅するかも」
「しないよ」

「私のこと嫌いになる」
「ならない」


私が言ったこと全部、即答で否定してくる。
わからないのに、そんなの信じられないのに……


「……話しても、何も解決しなかったら……?」


ぽつりと呟くと、彼の瞳は辛そうに揺れる。


「……確かに、そうだな。俺にできることなんて少ししかないし。でも、悩みとか誰かに話すだけで楽になったりすることあるだろ?凛月の辛いこととか全部、一緒に背負うよ」


そう言われて、一瞬息ができなかった。
言葉にできないたくさんの感情が、私の心をぐるぐると回る。


「ごめん。ほんと、自分勝手なこと言ってる。こんな無理やり聞こうとして……」

「……ううん」


確かにそうだと言う人もいるかもしれない。
でも、それでも嬉しいなんて思ってしまうから。


本当に自分勝手なのは私だ。
ずっと逃げている。

あの家族からも、彼からも、この気持ちからも、自分と向き合うことも。
逃げ続けてもこんなに苦しいなら、もう戦うしかない。


でも1人じゃ怖くて立ち向かえないから、それを助けてくれる人がいるなら。


「……聞いてほしい」


でも、話そうとしたら手が、体が、唇が震えて。
言葉が出てこないから。

「……ごめ、うまく、話せない」