オトナだから愛せない





「……くる、み」

「え、皐月くん!」

「……」

「皐月くん、なに?」




ベッドに寝かせれば熱で魘されている皐月くんが唇を開く。でも意識はしっかりしていないようで、なんて言っているのか聞き取れない。




「皐月くん、大丈夫?いまタオルと氷持ってくるから」

「くる、み、早く……帰れ、」

「え、でもこんな状態の皐月くん放っておけないよ」

「いいから、帰れ……。熱がうつる……から、」




皐月くんは、人に弱みを見せるのが苦手だ。冷たい言葉で突き放すけれど、本当は優しくて。




「皐月くん、」

「……」

「ちょっと、お仕事頑張り過ぎなんじゃない……」

「……」




皐月くん、私はやっぱり帰れないよ。こんな皐月くんを置いて、帰れないよ。



皐月くんに布団をかけて、氷とタオルを取りに行く。ごめんね皐月くん勝手に漁ります……。



綺麗に片付けられたキッチンで氷を袋に詰める。
汗を拭くためのタオルを数枚タンスの中から適当に選んで、皐月くんの元へ戻った。



そっと、おでこに触れれば先ほどよりも熱くなっている。




「皐月くんちょっと冷たいけど我慢してね」




タオルをおでこに乗せてその上に氷の袋を乗せる。ふと、皐月くんに初めて出会った時のことを思い出した。



初めて会った時も皐月くんは体調が悪そうで。でも、いくら心配しても「大丈夫」の一点張りだった。



眠っている皐月くんは無防備で、勝手に私がここに来たのに頼られているような気持ちになる。