オトナだから愛せない





「別れたいのは、皐月くんでしょ?」

「は?」




皐月くんはさらに眉根に皺を寄せると苦しそうな表情をして、グッと私を押した。皐月くんの後ろで玄関の扉が重たい音を鳴らして閉まる。




「胡桃、お前もう一回、言ってみろ」

「……え、だから私と別れたいのは皐月くんの、ほうで」




温度を感じない口調で皐月くんに責められて思わず後ずさる。なんだかすごく機嫌が悪いのはなぜ?




「俺がいつ、そんなこと言ったよ」

「え、ちょっ、」




首に腕を回され体を引かれた私は皐月くんの胸にダイブした。反対の手で首筋をするりと撫でられ、思わず体がビクリと震える。皐月くん……?



顎先を持ち上げられ、悲しい色を含んだ皐月くんの表情が視界に映ったかと思えば私の唇は皐月くんの唇に塞がれた。



唇を割って入ってくる皐月くんの舌が熱くて、息が出来なくて苦しくて、思わず涙を流した。好きじゃないなら、こんなことしないでって、私の胸がそう叫んでいる。




「んん……、さつ、き、くん……」




吐息混じりに抵抗しながら皐月くんの肩を押せば、塞がれていた唇が解放される。



いまにも泣き出しそうな瞳がこちらを見つめていて、その顔に胸がぎゅっと締め付けられた。