「そっち上がって行ったら来た駅戻ることになるけど」
「あ、」
俺の声に罰が悪そうに苦笑いを見せる彼女。その表情にハッとした。
「もしかして、上野より先の駅で降りるって嘘?」
「……いや、」
「本当はどこで降りるつもりだった?」
「えーと……、」
「どこ?」
「……神田、です」
どこまでもお人好しで、どこまでも純粋で。だから、嘘だってすぐにバレる。
可愛いなと、思ってしまった。
「でも、本当に私が勝手にやったことなので、どうか気にせず。ゆっくり休んで体調回復に努めてください」
「……」
パッと見、俺より全然若い。20代前半くらいか?お兄さんなんて呼んでくれてるが、もしかしたらおじさんとか思われてるかも。
こんな若い子に、しかもこんなに良くしてくれた子に俺は生み出してはいけない感情を生もうとしている。
これは、熱で少々いかれている思考回路のせいだ。セーブしろ。たまたま、出会っただけで、彼女は俺に好意なんてこれっぽっちもないのだから。
頭で考えて、考えて、考えて。感情を抑えようとした。



