オトナだから愛せない






この椅子に座ってからかれこれもう3本、電車を見送った。ここで座っていても体調は良くならないのに動きたくない。



もちろん、こんなところに座っていたって話かけてくる人なんていない。




「はぁー、本当に彼女はお人好しだったな」




ぽつりと、独白を溢す。正直、電車の中で声をかけられたときはお節介な人だななんて思ったけれど、俺は確かにあの時間、彼女に救われた。



どこの誰かさえ、分からないけれど。



取り留めもなくそんなことを考えて、このままではらちが明かないので次の電車が来たら帰ろう、そう決めた。



と、




「あの、風邪ひどくなりますよ」

「……え」




頭上に降ってきたのは、数十分前に聞いた声音。頭を上げるとこの駅に降りる時に頭を下げた彼女が、薬局の袋を手にして俺の前に立っていた。



どうして?
なんで、ここに彼女がいるんだ?




「え、は?なんでいるんですか?」




状況が飲み込めず、助けてくれた恩人相手になかなか冷たい言葉をお見舞いしてしまった。