「大丈夫ですか?もう着きますよ」
「……あぁ、すまない迷惑をかけてしまって」
「いえいえ、とんでもないです」
未だに重たい体を持ち上げ出口を目指す。
そういえば彼女はこの先まで乗ると眠る前に言っていたっけ。
「あの、本当に助かりました。ありがとうございました」
「気をつけてくださいね」
頭を下げる俺を心配そうな瞳で見つめる彼女。何かお礼をしなければ失礼だろうか。でも、今の俺はそれどころではなくて。
ふらふらしながら、扉を目指す。ガタンと止まった電車。《上野、上野》という案内と共に扉が開いた。振り返り、ペコっと彼女にもう一度、頭を下げれば「お大事に」と最後まで俺を心配する声に見送られた。
人の波に押されて熱に魘される俺の体は先ほど眠ってしまったせいだろう。すでに休息モードに入っていて余計に重たくなっていた。
人の群が落ち着いてから移動しようと、ホームの椅子に倒れ込むように座った。両膝に肘を預けて前屈みの体制で息を吐き出す。
「はぁー、しんど……」
帰らなきゃ。何度そう思ったか。でも体が動かない。
あの電車を降りて、どれくらい経った?



