オトナだから愛せない





「いや、でも、」

「大丈夫です、私その先まで乗るので」




彼女があまりにも屈託無く笑うから、なんだかすっと力が抜けた。俺はそのままだらしなくもだるい体を背凭れに預けて意識を手放した。






***






「お兄さん、お兄さん、」

「……」

「お兄さん、起きてください」

「……ん?」

「お兄さん、次、上野です」




とんとんと、肩を叩かれ目を覚ます。



重たい瞼を持ち上げれば目の前には、ロングヘアを揺らしながら、くりくりの目をした女性が俺を覗き込んでいた。



誰だこの人は。そう思ったところで《次は上野、上野、お出口は左側です》と、聞き慣れた音声が聞こえてきて、眠りに入る前のことを思い出した。



そうだ、俺は体調不良で倒れそうなところをこの人に助けてもらったんだ。