オトナだから愛せない




ほら、最近の俺は本当におかしい。こんなことでもどきどきと胸が鳴るのだから。いい歳したおじさんがなんて有様だ。




「近所迷惑だから、そんな大声出すな」

「はーい……」




本当は嬉しいくせに照れ隠すために、そんなことしか言えない俺。胡桃の声のトーンが落ちるのが分かる。好きな子を傷つけてばかり。




「胡桃、」

「……なに?皐月くん?」

「行ってきます」

「うん、行ってらっしゃい!」




でもこんな俺にでも、胡桃は笑ってくれるのだ。
自分でも分かるくらい、この日会社に向かう足取りは軽かった。






数時間後。



会社のデスクでプレゼン用の資料に目を通していれば突然部下に爆弾を投下された。




「華井専務、今日なにかいいことありました?」

「え、どうしてだ?」

「いえ、なんだか朝から嬉しそうだったので」

「……いや、」

「あ、そうですか。じゃあ私の勘違いだったみたいです。お仕事の邪魔してすみませんでした。失礼します」




焦った。いいことなんて、別に。そう思ったけれど早くなる心臓の音が俺の思考の邪魔をする。




「……はぁ、中学生か俺は」




机の上で、ブーッと震えたスマホ。俺は思わず口元を緩めた。