オトナだから愛せない





「でもさ、傘って人を雨から守るのが仕事じゃん」

「え、うん」

「俺が傘だったらきっと、こう思うよ」

「え、杉野くんが傘だったら?」




思わず杉野くんの例えに笑ってしまった。




「そう、俺が傘だったら、ひとりを濡らさずに使われるより、ちょっとくらいお互いの肩を濡らしたって、ふたりを雨から守りながら使われるほうが傘として仕事したなって」

「なにそれ」

「傘の気持ちを代弁してみた。ふたり入って帰ったほうがお得だしね」

「お得って、そんな福袋みたいな」




そう言うと杉野くんは開いた黒色の傘を頭上にさして雨の世界に足を踏み入れる。




「早く帰るぞ」

「え、でも、」

「いいから」

「うん、じゃあお言葉に甘えて」




手にしていたスマホが雨に濡れないよう鞄にしまい、雨の中に一歩足を踏み出す。



半分空いた傘の下に入り「お願いします」とひと言呟いた。杉野くんの「オッケー」というひと声で私たちは歩き出す。



色とりどりの赤や黄、ドットや花柄の傘をさした人たちとすれ違いながら雨の道を進んだ。



打ち付ける雨はさきほどよりも強くなっていて、傘を叩く音も比例してうるさくなっている。