「胡桃」
「え、ちょ、皐月くん!?」
けれど、そんな私の優しい気遣いをシカトして玄関に入ってきた皐月くんは私の腕を掴んで思い切り引っ張った。
お酒で熱くなっている皐月くんの体温に包まれて、私の胸のどきどきが加速していく。
ガチャリと皐月くんの後ろで玄関の扉が鈍い音を立てて閉まった。
しんっとした玄関で皐月くんに抱きしめられているという妄想なのか現実なのか曖昧なこの空間。
けれど、ふわりと香ったお酒の匂いに、あぁ、そういうことかと鈍い私でも気がつく。皐月くんの意思ではなくてお酒によるものだと。
普段からこういうことしてくれたらいいのに。なんて思うけれど、そんなこと言えるわけなくて。
「皐月くん、ねぇ、離して」
「無理」
「お水持ってくるから」
「嫌だ」
「ねぇ、だいぶ酔ってるでしょ?大丈夫?」
「……」
ぎゅっと、私と皐月くんの間に隙間なんてないんじゃないかってくらい強く抱きしめられて、思わず遠慮がちに私も皐月くんの背中に腕を回した。



