オトナだから愛せない





「胡桃?どうした?」

「……皐月くん」

「……」

「……」




話すのもなんだか気持ち的にしんどくて、自分から押しかけたくせに無言のまま固まるなんとも失礼な私。



黒色の上下薄地のスエットを着た皐月くんと視線が合う。このまま玄関の扉を開けっぱなしにしてしまったら皐月くん、寒いだろうななんて考えて申し訳なくなった。



ちょっと落ち込んでて。なんて話したら、そんなことで来たのかよって怒らせちゃうかな……。



会いたかったのに。急に怖くなった。情緒不安定な自分が、嫌。




「胡桃……?」

「……」

「……」

「……ごめんね、やっぱりなんでも、ない」




やっぱり、帰ろう。



俯き、皐月くんの視線から逃げるように後ずされば、皐月くんの腕が伸びてきてぽんっと私の頭を優しく撫でた。




「なんで?帰るなよ」

「……」

「胡桃、おいで」

「……」




優しい声音を落とした皐月くんは、目尻を垂らして悲しげに笑う。その顔は反則だ。言われるがまま皐月くんに近づけば私の後ろで玄関の扉がゆっくり閉まった。



頭を撫でてくれる皐月くんの手があまりにも優しくて、泣きそうになる。反対の手で私の指先をするりと絡め取った皐月くん。下から顔を見上げれば、うんと優しく笑うから思わずぎゅっとその手を握り返した。