オトナだから愛せない





皐月くんの背中に腕を回し、皐月くんには敵わないなりにぎゅっと抱きしめながら、




「もう怒ってないですか……?」

「怒りたいことはたくさんある」

「え……」

「(そもそも、なんで一緒に帰ってきたんだとか、そもそも告白なんてされてるなとか、普通なら夫がいるのに告白されたことを後ろめたく思うはずだろとか、いろいろ言いたいことはあるけど)」

「……あんまり、怒らないでもらえると嬉しい、です」

「さっきのお前の言葉でイライラは全部吹っ飛んだ。バカに免じて今日は全部、許してやる」

「私なんか言ったっけ……?」

「お前は分からなくていい」

「なにさ」

「うるさい、バカには分からないだろ」

「……また、バカって言う……」

「バカ、俺のは愛情表現だから」

「(皐月くん、らしい)」

「(バカだと言われて膨れる君は気づきもしてないんだろ。当たり前だと言わんばかりに“俺の奥さん”だと言ったことが、どんなに俺を喜ばせているかなんて)」




思わず、笑ってしまった。杉野くんにもらった甘い言葉は嬉しかった。けれどやっぱり私には皐月くんがくれる、伝わりにくい不器用な愛情表現のほうがどうしたって、特別で。




「あっ、」と、なにかを思い出したように片手をポケットに入れ取り出したスマホを操作する皐月くん。