コンビニが見えた。あと数メートルほどで到着する。ポケットの中のスマホは震えることなく静かで。皐月くんはまだメッセージを見ていないんだなと思いながら、杉野くんの言葉を待った。
「……」
「……」
「俺の好きな人が、胡桃だから」
「え、」
不意になんの前触れもなく、歩くスピードも変わらず、まるで息をするみたいに、当たり前ささえ感じる声音で杉野くんは呟いた。
「胡桃の好きな人とやらが、俺だったら嬉しいんだけど」
「え、」
「全くそんな気配感じないからなぁ」
「え、えーと、私……?」
「嘘つくの下手な上に、胡桃は鈍いよね」
「この短時間でだいぶ貶されてるけど、大丈夫かな私……」
「そんなことないよ、“素直で純粋で可愛いね”って言葉の裏返しだから」
思わず頬が熱くなった。甘ったる過ぎるくらいの言葉がとろとろと私の中に溶けていく。
どうやら、同級生の男の子という生き物は女の子にこんな甘い言葉をプレゼントしてくれるらしい。
皐月くんだったら、バカとかアホとかそういう言葉が返ってくるのが当たり前で。でも、それでもその言葉の裏側に心配とか愛情とかそういうものを感じてしまうから仕方がない。
「杉野くん、あのその、好きって言ってくれて凄く嬉しいんだけど、」
「うん、いいよ。分かってるから。だって今だって胡桃、俺と一緒にいるのにその人のこと考えてるだろ」
「え、いや、その……」
「本当に分かりやすいよ、分かりやす過ぎてとうの昔から失恋してる気分だった」
「あの、ありがとう。そんな私でも好きって言ってくれて」
「そんな胡桃だから好きになったんだ。素直で、単純で鈍感で」
「単純と、鈍感は褒め言葉じゃないよね……」
拗ねたように言えば杉野くんはクスクス笑って思ってもいないであろう「ごめん、ごめん」と謝罪の言葉を連呼した。



