仮眠室で囁いて

「昨夜は…いいや、なんでもない。服部先生は…大人だな。
…院内ではぶっきらぼうでぞんざいに君のことを扱ってるように見えて心配してたけど、ものすごく大事にしているし、高橋さんに執着してる。
俺が付け入る隙なんてこれっぽっちもなかったよ。」

「 えっ?」

「いいや、なんでもない。
服部先生に謝っておいて。
先生の大事な彼女に近づいてごめんねって。でも、泣かすようなことがあったら俺が黙ってないからって。
まぁ、そんなことしないだろうけどね。
じゃあね、お疲れ様高橋さん」

極上の王子様スマイルを浮かべた先生は、もう一度頭に手を置き軽く頭を撫でてじっと私をみつめて優しく目を細める。
ドギマギする私にもう一度ふわりと笑い
「さよなら、高橋さん」
手をヒラヒラさせて立ち去る坂口先生を、その後ろ姿が見えなくなるまでずっと見つめていた。