仮眠室で囁いて

「安心してください。抱いてませんから。卑怯だけど酔わせてでも自分のものにしたかった。

先生、まだ彼女を抱いてなかったんですね」

「……」

「俺を服部先生だと思って抱きつく女は悔しいけどさすがに俺も手が出せない。
あぁ、でも謝りませんよ。
抱いてはいないが抱きかけはしましたから。」

坂口の言葉にピクリと反応する。

寝返りを打った彼女の素肌の肩が布団からあらわれた。

掴みかかろうとした俺に

「なんでぐずぐずしてんだよ!
酔いつぶれる前に不安がってた。早く本当の恋人になりたいって悲しそうにいってた。
俺が付け入る隙が少しでもあるなら奪いますよ!」

「決めるのは俺じゃない……
でも、そう簡単に俺も手放すつもりはない!」

睨みつける俺を坂口はくしゃりと表情を崩し

「支払いは済んでます。
早く彼女の願いを叶えてあげてください。帰ります」

そう言い残し、静かに部屋から出ていった。