「練習は実習でたくさんやったので大丈夫です!
今も小児科で上手いってほめられたところです!」

「へー俺のお陰だな。」

「先生、それって…」

「ん?なんだよ。」

意地悪で甘い顔をして笑う先生に近頃私はドキドキしている。

意識し出したらずっと先生が私を大事にしてくれていたことに今更ながらに気がついた。

「なんでもありません。
すみません、仕事の邪魔をして。
帰ります。お先に失礼します」

「…まっすぐ帰るのか?」

「えっ!いや、あの晴美たちと飲みに行くんです!」

先生は目を細めてじっと私を見る。

「ほどほどにしとけよ。
飲み過ぎたら迎えにいってやるから連絡しろ」

頭をポンと叩いて
「お疲れ」

一言そう発すると、仕事モードのピリッとした先生にもどり、手元の資料に視線を移した。

嘘をついたことに胸がチクリと痛む。

…ダメだ。
断ろう。先生を悲しませたくないし嘘はつきたくない。

私の足は再び小児科に向かっていた。