「あ、正解? だいじょーぶ。俺、大きさ気にしないタイプだから」

「いい加減にしないと――」

 小さな手をめいっぱい開いて振りかぶるキョンちゃん。
 キッと俺を睨み下げる。

「ココだよ」

 俺は、自分の頬を指差す。

「どーぞ。やるんなら、思いっきりやれよ。
すっきりするぜ?」

 俺が顔を傾けて頬を突き出すと、キョンの振り上げた手のひらがピクッと震えた。

 キョンは眉間にしわを寄せてゆっくりと指を折り、ぐっとむすんだと思えば、左手でさっとその拳を包んで、自分の胸の前に移動させた。

「戸部さんを叩いたってすっきりなんかしないわよ……きっと」

「キョンちゃん、わかってるじゃない」

そう、微笑みかけると、キョンは悔しそうに唇を噛んだ。

「あんた、嫌い」

 俯いて、つぶやくキョンは、なんだかとても愛らしく見えて。

「うーん、悲しいけど、知ってる」

「何もかもお見通しって感じで見下されてるのが腹立つのよ」

「確かにキョンはわかりやすいけど、見下してないよ」

 ただ、ちょっと苛めたくなっただけ、と心の中で付け足して。