彼女を10日でオトします

 さっきの写真の男……。まりこさんの他に女が3人もいるなんて。しかも、まりこさんは、その中の一番じゃない。
 許せない。でも、1週間後、あの男に天罰が下る。

 はあ、疲れた。思った以上に重い暗示で困ってしまったわ。言葉を選ぶのって難しいわね。

 息つく暇も無く、扉が開く。
 
 光に包まれて、ドアの前に立っているのは、見たことがない男。

 眩しい。

「閉めて」

 私は、男に向かって声を発す。
 聞こえてないのかしら? 微動だにしない。

「閉めて」

 今度は強い口調で言った。

「どうぞ」

 ようやく、扉を閉めた男はおずおずと椅子に座った。

 初診の男。顔は、悪くない。どちらかと言うと……いい方なんじゃない?
 どことなくスレた雰囲気にも関わらず、その大きな瞳はガラス玉のように澄んだ色をしていた。母性本能をくすぐる女ウケしそうなタイプ。

 容貌でわかるのはこれくらい。
 さて。本番はここからよ。どんな男か、洗いざらいみてやろうじゃない。

 …………。

 あれ……? おかしい。どうして?
 改めて目を凝らす。

 嫌だ……。見えない。

 この男の周りだけ、数字が消えている。消えている? 違う。単に見えないのよ。

 数字が見えない……。嫌だ……どうして?

「……みえない」

 勝手に唇が動いた。

「あっ……」

 男が呆然と私を見つめる。
 怖い……。