彼女を10日でオトします

「あのねえ、お姉ちゃん……」

 怒りを押し殺して、溜め息をひとつ。

「ああ! 響ちゃん、ごめんなさい。私知らなかったのよ……。
響ちゃんが本当はレズビアンだったなんて」

 ええ!? そっちですか! 私は、いたってノーマルですが!

「いや、お姉ちゃん、ちが――」

「大丈夫よ! 絶対誰にも言わないから!
でも、嬉しいわ。響ちゃんが本当のことを打ち明けてくれて」

 お姉ちゃんは親指を突き出して、私の鼻先にぐっと近づけた。
 そして、ウインク。
 誰か助けて。

 ……もう、どうでもいいや。
 面倒だから、誤解させたままにしておこう。

「ああ、響ちゃん、そんなに不安にならないで?
大丈夫よ、恋愛は自由だもの」

 私が不安なのは、お姉ちゃん、あなた自身ですよ。

「ほら、響ちゃん、そろそろ時間よ。お着替えしましょうね」

 ニヤリと目を光らせるお姉ちゃん。い、嫌な予感。

「お、お姉ちゃん、まさか、また――」

 お姉ちゃんは、妊婦とは思えない軽やかな足取りでカウンターから出てくると、私の腕をぐいぐい引っ張る。

「ふふふ。響ちゃんの新しいドレス、買ってきたのよぉ」

 うげ。