「いらないわよ!!
だいたい、何なのよ、その……いかがわしさが満点じゃない!」

「クチでちゃーんと言ってくれなきゃわかんないじゃない」

「バッ……察しなさいよ!!」

「えー。あ、クチで表現してくれてもいいよ」

「ううう……」

 あ、あれ? 「お断りよ!!」が来ると思ってたのに。
 キョンは、顔を真っ赤にして、唇を噛んで、俯いて……。

 いや、ちょっと待って。

 この状況って、キス、しちゃっていいような感じ?
 つうか、なにこれ。
 これって、俺に対する挑戦? 俺を試してる?
 ここで、ちゅーしたら、平手が飛んでくる、みたいなお約束パターン?

 うわあ。キョン……ちょっと見ない間に可愛さに磨きがかかってない?

 一体、キョンに何があったん――あ!

「キョン、そういえば、キョン!!
いつから、かおるんと付き合ってたの!?」

 そうだ。ノリさんが言ってた。
 キョンとかおるんが……ああ、もう駄目。
 これ以上、思い出したら、俺、泣いちゃいそ。

「かおるんって誰よ」

「荒木薫!!」

「ああ、薫さんの事ね」

「『ああ』ってことはやっぱり……かおるんと付き合ってるんだ。
かおるん、イイ男だもんね。
男の俺から見ても、そう思うもん……」

「何言ってるのよ。どうして薫さんと付き合わなきゃいけないのよ。
私、あなたのことが好……あ」

 キョンは、慌てた様子でその口を手で覆った。

 す?
 酢だことか、すっとこどっこいとかじゃないよね? す、って。

 キョン、『好き』って言おうとした……?