「何それ? 生きてて?」

 尋ねる俺に、キョンは、ぱっと顔を上げた。
 瞳が涙で濡れて、それをパチくりさせる。

「え? 何って……たすくさん、死のうとしてたんじゃ……」

「はい? 何で?」

「何でって……ハア!?
だって、ヒデさんが……。
ヒデさんが、たすくさんが自殺してしまう、みたいなこと言ってたから……」

「ヒデが? なんだそれ」

 何でそんな話になってるわけ?
 驚きと焦りに満ちていたキョンの顔。徐々に、ぐ、ぐぐっと眉間にしわが寄りはじめた。

「…………」

 や、やばい? なんかわかんないけど、噴火まであと3秒って雰囲気。

「……こっちのセリフよ!!
あんなね! 最後にあんな顔見せて急にいなくなったら、誰だってそう思うわよ!!」

「えー!? 何で?
俺はさ、ただキョンにとんでもなく悪いことしちゃったなって反省してただけなのに」

「それに、こんな自殺の名所みたいな崖の上!!
地図で見せられたら、完っ璧、そう解釈するわよ!!」

 地図?

 って、え……。俺のせい?
 俺のせいで、キョン、こんなに――。

「あっれー? キョンちゃん、なんかいつもと違うねえ。
こんなに怒るほど……」

 キョンの首に手を差し込む。

「冷たっ」

 キョンの体がびくんと跳ねた。