彼女を10日でオトします

 ファミレスを出て、ノリさんのお礼を言うと、「ま、元気だせよ」と背中をバシンと叩かれた。

 それにしたって最初っから最後まで気を使わせちゃったな、って反省してたら、「男は、薫だけじゃないからよ」だって。

 そんなことわかってますけど。俺だって男だし。

 なあんかニヤニヤしてるノリさんの背中を見送って、俺も足を踏み出した。


 アパートに帰って、バスルームに直行。
 いつもより、熱めのシャワーがへなった髪の上ではじける。

 今、キョンは何をしてるんだろう。
 何をおもっているんだろう。

 つん、と澄ました横顔、目尻を上げて強く意思表示する瞳、かと思えばささいな事ですぐに泣くし、なかなか笑ってくれない。

 たったひとりの女の子のことばっかり考えていた10日間。

 100人への想いがひとりに集中しただけ、じゃ片付かないような複雑にこんがらがった感情。

 あと1日じゃ、今更どうしようもないわな。

 宣言どおりにはならなかったけれど。

 うん、悪くなかった。


 だけど。

 キョン、苦しすぎるよ。