彼女を10日でオトします

「うふふ。あったのよお。お姉ちゃん今日ね、ナンパされちゃったのよ! しかも高校生に」

 夫帯者がそんなに喜んでいいの? お姉ちゃん、顔なんか赤くさせちゃって。
 
 こんなお姉ちゃん見たら、貴兄、きっと泣いちゃうわね。お姉ちゃんにも貸し1。私ってホント優しい。

「お姉ちゃんにしては、珍しい事じゃないけど。でも、妊婦をナンパするなんて、やっぱり珍しいわね。で、どこでナンパされたの?」

「バスの中よ。すごく良い子でね、しかも、結構な上玉よ。そうね、上の中ってとこかしら」

 うん。今の話のツッコミ所は二つね。
 まず、妊婦をナンパする野郎は、良い子のはずないじゃない。
 二つ目は、お姉ちゃん、そんな清楚な顔で上の中って……。ナンパしてきた男にランクをつけるのはやめて。

 私は、溜め息をついてカウンターの一番隅に鞄を置いて、足の長い椅子に腰をかけた。

 ふんふんと、鼻歌をもらしながらティーポットに葉っぱを入れるお姉ちゃん。きっと貴兄は、お姉ちゃんのこういうところが好きなんだろうな。

 嬉しい事や悲しい事、全部顔に出ちゃう、素直なお姉ちゃん。……私とは正反対。

「あ、そうそう。響ちゃん、その子ね、響ちゃんと同じS高なんですって!」


「へえ」

 お腹に幸せの象徴がいるって言うのに、それを壊そうとするナンパ野郎はどうでもいい。