玄関まで歩くと、後ろからノリさんがついてきた。

「たすく、朝飯食った?」

「いいえ、食べてません」

「俺も。ちょっと付き合えよ」

 と、俺を押しのけて、扉を開けた。

 俺、朝飯食わない人なんですけど。


 外は、雨が上がっていた。
 植え込み、丸坊主の枝から滴る水玉を朝の日差しを斜めから受けてキラキラ輝く。

 すごく、すごく、眩しく見えた。
 眩しすぎて、自分の汚さが浮き彫りにされる。
 この煌き、俺の今の心には遠すぎるんだ。

「たすくよう、一応聞いてやるよ」

 ノリさんは、俺の頭を手のひらでガシっと捕まえて言い放った。

「たすく、これから、どこ行くんだ?」

「朝飯でしょ?」

「その後」

「びしょ濡れだから、家帰って着替えますよ」

「お前なあぁ。その後に決まってんだろ?」

「ひ、み、つ」

 ノリさんは、俺のわき腹を小突いた。
 くすぐったい。

「やっと、調子戻ってきたじゃねえか。
あ、そう言えば、昨日、薫と来た子、あれ、薫の彼女か?」

「かおるんと? え、かおるんに彼女?
俺、聞いてない……」

「黒い髪が長くて、片方の目が変な色してたけど、気丈な女でなかなかの美人だったぞ」

 は!?
 髪が長くて、片方の目が……?

「その目、メロンフロート色してました!?」

 無意識にノリさんの腕を掴んでしまった。

「お、おい、急にどうした?
薄い、濁った緑して――」

 キョンだ!!
 なんでキョンが、かおるんと?
 かおるんとキョンが付き合ってる……?

 嘘だろ……。