「――わかった。川原はリストから外す」

「ありがとうございます。
そうしたら、ナナさんのことですが。
俺がバイトしてた喫茶店にやってきたんですよ」

 高智さんは、黙って小さく相槌をうった。
 俺もつられて相槌をうち、話を続けた。

「あの人、今何してると思います?
面白いですよ。真鍋里美」

「真鍋……」

「政治家、真鍋敏郎の妻。
マリファナ売ってくれって言われました」

 高智さんは、ふ、と鼻で笑って煙草に手を伸ばした。

 金が集まるところには、漏れなくヤクザ。
 政界だって例外じゃない。

「紙となんか書くものないですか?」

 ライターをポケットにしまうノリさんに声をかける。

「ああ」といって、デスクから持ってきてくれたメモ帳に、頭の中に記憶した名刺の内容を書き出す。

「これ、ナナさん、あ、今は里美さんだ。
里美さんの会社の住所と電話番号、それに携帯番号です」

「あの女に売ってやれってことか」