結晶が入ったジッパー付きの小さなポリエチレン袋を高智さんに渡した。

「どう思います?」

 高智さんは、手のひらに乗せたそれに視線を据えた。

「上等」

 一言。それ以上は言いそうも無い雰囲気を漂わせる。

 やっぱり高智さんだ。ぺらぺら喋ってくれない。

 高智さんは、所謂インテリヤクザ。
 中高生の頃は、怖いもの知らずで飛ばしていたが、スカウトの目をかいくぐってそれから4年間ピタっと姿を消したらしい。

 高智浩輔の名前が風化してきたころ、誰もがしっている大学の卒業を背負ってこの組の門をたたいた、という噂。

 俺とは世代が違うし、高智さんは自分の事は一切喋らないから真意の程はわからないけど。

「川原の妹が持ってたんです」

「あそこにこんな上物流したところで、うちには何のメリットも無い」

 それはわかってる。
 人が悪い。俺がわかってるっていうことも、高智さんならわかってるはずだ。
 
 俺が聞きたいのはそこじゃない。
 
「それの出所はどこですか?」

 高智さんは、まっさらなクリスタルの灰皿にまだ長い煙草を押し付けながら、片頬だけで笑った。

「たすく、らしくないな。随分と単刀直入じゃないか。
何をそんなに焦ってる?
……もう少し話を楽しませろよ」

 いつだったか、明らかな脅しを高智さんは『商談』と言っていたことをふと思い出した。