彼女を10日でオトします

「琴実、出せ」

「あーっはっはっはっは!
たすく、何言っちゃってんの?
持ってるわけないでしょ?
持ってないんだから、出せるわけないじゃん」

 掴んでいた髪の毛を離したたすくさんの鋭い命令口調に、琴実さんは高笑いを上げる。

「じゃあ、脱げ。
口はクサくせえ、汗はシャブくせえ。
探す証拠は充分だろ?」

 たすくさんは、鼻で笑いながら抑揚もなしにそう言う。

 脱げ?

「来い」

 そう言うや否や、たすくさんは、荒い手つきで琴実さんの腕を引っつかむと、ベッドに引きずりこんだ。

「ち、ちょっと!!」

 ようやく声が出て、二人のもとにかけよろうとした私は、後ろに引っ張られた。

「キョンちゃん、行かない方がいい。
これは、たすくと琴実の問題なんだ」

 振り返って見上げる。
 ヒデさんは、たすくさんと琴実さんが消えたベッドのカーテンを見つめて、悔しそうに、歯がゆそうに、それでも、憐れみの色はそのままに、歯を食いしばっていた。

 変だよ。
 どうして、ヒデさんは、たすくさんを止めないのよ。おかしいでしょ。
 琴実さんの状態も異常、この空間の空気も異常、堪えるヒデさんも異常だよ。

 覚悟していた、琴実さんの悲鳴は聴こえず、不気味なほど静かな保健室内を琴実さんのものと思われる荒い呼吸と衣擦れの音だけが支配していた。