彼女を10日でオトします

「……知らない。知らないっ!」

 琴実さんの金切り声。

「はは。俺をごまかせるとでも思ってんの?
……ヒデちゃん、鍵閉めてくれる?」

 たすくさんは、琴実さんも、ヒデさんも、見ていなかった。
 もしも、たすくさんが何かを見ているとしたら、その視線の先にあるものは、ひたすら空虚だと思われた。

 そして、たすくさんは、空虚から目を逸らし、ただ立ち尽くす私の瞳をとらえた。

 不思議と恐怖はなかった。
 狂気の雰囲気を纏っているにも関わらず。

「……キョン、ごめんね」

 そう言いながら、朝方の窓に張った氷のようなはかなさで微笑む。

 何に対して? という問いは、今にも泣き出しそうなたすくさんの瞳に押し戻されてしまった。

 窓の外は、霧状の雨が北風にふかれて舞っている。