彼女を10日でオトします

 次の瞬間、私は目を疑った。

 琴実さんは、たすくさんの首に腕を絡めて……唇を押し付けた。

 たすくさんの唇に。

 ズンっと胸を貫かれた気がした。

 気がしただけじゃない、痛い。

 なに、これ。

 息が吸い込めない。吐き出せない。

 苦しい……。

 目を閉じて甘く鼻をならす琴実さんを冷たく見下ろすたすくさん。
 その視線はまるで、自分とは無関係な人の情事を観察しているかのような。唇を合わせているのは、自分なのに。

 私は、動けなかった。

 やめて! と、頭の中で、私の声がする。

 目を逸らすこともできない。

 無表情だった、たすくさんの顔が歪んだ。

 たすくさんの手が動いた。腕が上がる。たすくさんは、琴実さんの頭に手を置いた。

 ゆっくりと、琴実さんの後頭部を滑り落ちるたすくさんの手、その指に絡まる赤い髪。

 いやだ!
 いやだ!
 やめてよ!

 かくん、と琴実さんの頭が後ろへもっていかれた。

 たすくさんの手に、一束、琴美さんの髪が握られていた。