彼女を10日でオトします

 ばくん、ばくん。

 心臓が全身にもたらす衝撃は、一気に逆さまにしたフタのないペットボトルを連想させる。

 狭い出口に集中する液体。
 一息に飛び出た分の体積を補おうと、勢いよく空気を取り入れる。その度にボトルは大きく振動する。

 今の私の心臓がと一緒だわ。

 こんなことを考えるのは、余裕があるからじゃない。

 逆。

 無理矢理にでも何かを考えていないと、得体の知れない渦の中に引き込まれてしまいそうだったから。

 睫毛が舌で遊ばれる。
 不思議としか言えない感覚に、身を投げてしまえたら、どんなに楽か。

 思考、破綻。

 気付けば、右手は自由になっていた。

 ん、と思った瞬間、太腿に違和感を感じた。

 触れているのか、触れていないのかわからない。不安定な優しい温度が太腿をはい上がる。

 腰から首筋にかけて、ゾクゾクする。

 私の右手は、自由になったにも関わらず、動かない。