彼女を10日でオトします

「ち、ちょっと、降ろしてよ!」

 ようやく出てきた文句も、「レディーがキャンキャン吠えないの」と何故だか私が、優しく窘められているニュアンスで。

 もちろん、カチンとくる。
 動揺というものは、あっという間に怒りに変換された。

「いい加減にしなさいよ!」

 四肢を駆使して暴れると、木から落下するりんごよろしく、私の体は万有引力に従った。内臓が浮く感覚。

 落ちる! と思った直後、私の体が大きく弾んだ。
 ギシ、ギシ、とスプリングが唸る。

 スプリング!? ってことは、ベッド!?
 何で、保健室のベッドにスプリング入りのマットレスが引いてあるのよ!!

「キョンちゃん、だっこしてる時に暴れちゃ危ないでしょ。
俺、力無いんだからさ、間違って床に落としちゃうかもよ?」

 そんなことを飄々と述べるたすく(もう、こんなやつ、呼び捨てでいいわ!)は、慌てて起き上がろうとする私を再び押し倒した。私の体の上に覆い被さる。

「どい――」

 てよ! と言おうとした私の言葉をたすくは「俺の」と遮る。

「俺の力はさ、こうやって、好きな子を押さえつけるためにあるんだよね」

 と、私の指に自分の指を絡めて、枕を挟むようにしてマットレスに押し付けた。

 声が喉にひっかっかって出てこない。

 熱を持った瞳は、いつもの子犬のような可愛らしいものではなく、獲物を追い詰めた肉食獣、例えるならクーガのようだ。

 その視線に捕まって、私は、動けなくなってしまった。

 鼻と鼻が微かに触れる。

「俺のことが大好きになる魔法をかけてあげる」

 私の動きを止める作用があるらしいたぎった瞳はそのままに、口角をくっと上げた。

 なにそれ!?

 この人、頭、大丈夫かしら!?

 それより、何より、この状況は、何!?