たすくさん、乗り越えたって言ってなかった?
随分、前だけれど、たすくさんの大切なひとが教えてくれたって……。
まだ、乗り越えていないの? それとも、別の事なの?
どうしてたすくさんは……冷たい目をするの?
たすくさんは、訪問記録の表紙を、パタン、と閉じた。
それを合図にしたように、瞳の奥の洞窟はすっと消えうせた。
「あ、ねえ、キョン、メロンフロート、みせて」
メロンフロート?
「キョンちゃんの、目。ふたりっきりだし、いいでしょ?」
義眼、の下の事を言ってるのよね、きっと……。
「だめ?」
「駄目ではないけれど……」
「俺、キョンの目の色、好きなの」
好き、という単語に、心臓がびくんと反応を示した。
このまま、見つめられ続けたら、どうにかなりそう。
煩い心臓の音から逃げ出すように視線を逸らした。
「わ、わかったわよ」
本当は、こんな濁った瞳、晒したくない。
それなのに、俯いて義眼の入っている目に手を添える。
どうして同意してしまったのか……そんな疑問を頭の中に廻らせながら。



