彼女を10日でオトします

 閉じた瞼の奥の瞳が右へ、左へ動く。
 頭の中の記憶を探しているのかしら。

「やっぱり、おかしい」

 目をあけたたすくさんが、確信をもった口調で呟いた。

「俺の記憶と訪問記録、異なる点がいくつかある」

 その口調は、いつものたすくさんの口調とは全くの別人で。
 能面を思わせる無表情に、唇だけ僅かに動かして喋る。

「ど、どういうこと……?」

 訪問記録に落としていた冷たい視線を、温度をかえないまま私に視線を預けた。

 瞬間的に、背中に氷を落としたような感覚が訪れた。

「た……たすくさん……?」

「おっと、ごめん、ごめん。
ま、俺の予感が外れれば、問題はないんだけどねえ」

 たすくさんは、にぱっ、と、暗闇の中に白熱球をともしたような笑顔を作った。

 それでも、たすくさんの瞳の奥は、出口のない洞窟を連想させた。

 予感が当たれば、問題があるってこと……?

 またひとつ、氷が背中をすべり落ちる。