彼女を10日でオトします

 一歩進むごとに、私の腕を掴むたすくさんの手の力が強くなる。

「たすくさん」

 無視しているのか、それとも本当に聞こえないのか、たすくさんの後姿に変化はうかがえない。歩みに合わせて、明るい色の髪がふわりふわりと空気を取り込むのみ。

「たすくさん、痛いわ」

 もう一度、その後頭部に声をぶつける。

 すると、一際強く腕を引っ張られ、たすくさんの脇を半周する。体が移動する早さに追いつけない三つ編みが一呼吸おいて、待ってよ、と追いかけてくる。自分の顔が歪むのがわかった。

 気が付くと、廊下の壁を背にたすくさんと向き合っていた。

「ちょっと――」

 ――何するのよ、という言葉は、喉の奥に引っかかって出てこなかった。

 たすくさんのまあるい目がくっと細くなる。私の目を容赦なく見つめる視線は、光の範囲をしぼったみたいに、さらに力強いものになった。

 なんて……目で見てくるのよ。

 至近距離で真一文字に引かれた唇が、一旦薄く開き、何か決意したかのように、また、閉じられた。

 たすくさんは、肩を大きく上下させながら、空気を吸って、吐いた。

「俺じゃ……だめなの?」

 そんな顔、しないでよ。
 なんでそんな……今にも泣きそうな顔するのよ。

 睨めないじゃない……。

「ねえ、キョン、答えてよ」

「誰も……だめなんて、言ってないわよ」