「なんか、ね。すっきりしたの」

 キョンは、んーっと腕を空に突き上げて、体を反らした。

「それで、わかったの。
私、貴兄のこと、もしかしたら、好きじゃなかったのかもって」

「はあ?」

 俺は、素っ頓狂な声を上げていた。
 にらめっこをしていたら、向かうところ敵なしの顔をしていたと思う。

 え? なに? どういうことよ。

「ふふ、私ね、たぶん、羨ましかったの。お姉ちゃんが」

 あ、にらめっこ、キョンに勝った。
 駄目だ。俺の頭崩壊寸前。

「お姉ちゃんは、両親ができたじゃない。
貴兄と結婚して。貴兄のお父さんとお母さんを、おじさん、おばさんじゃなくて、お父さん、お母さんって呼べるようになったでしょ」

「う、うん。そうだろうね。義理の両親だもんね……」

「それがね、羨ましかっただけ」

 急展開に俺、ついていけないんですけど……。

「つまり、キョンは、貴史ちゃんのこと、好きじゃないってこと?」

「好きだよ」

 はい? もう、なにがなんだか。

「よくあるじゃない。ラブとライクの違いっていうの。
ずっと、ずっと、ラブだと思ってたけれど、私の勘違いだったみたいね」

「でも、キョン、泣いてたじゃない」

「ああ。私の十年間、なんだったんだろうって思ったら、急に虚しくなっちゃって」

 ず、随分あっけらかんというのね、キョンちゃんは……。