彼女を10日でオトします

「私、貴兄のこと、思いきりなじってしまったわ……」

 後悔という後悔を全て閉じ込めた、例えば水槽の中に敷く玉砂利のような、沈む為に作られた声色に聞こえた。

「そうだね」

 俺は肯定する。現場をばっちりこの目に、耳に納めた。
 俺、キョンに嘘つくのやめたんだから。

「貴兄……、傷、ついてなかった?」

「さあ。俺は貴史ちゃんじゃないから」

 俺、キョンを慰めに来たはず。それなのに、口から飛び出た言葉は、キョンを突き放してしまうようなささくれ立ったものだった。

 ふきつける冷たい風は、透明感に富んでいるように感じて。
 その透明感は、何故だ、何故だと、俺を攻め立てる。

 何故、優しくキョンを慰められない?

 俺の背中で渦巻く黒いものから逃れるように、俺は歩みを進めて、屋上をぐるりと囲む鉄格子を掴んだ。

「キョン、煙草、吸ったことある?」

 下に視線を向ければ、テニスコートの中で、ジャージ姿がラケットを振っている。

「たばこ?」

 コンクリートと靴底がこすれる音が耳に入る。

「そそ。俺、本気で後悔しちゃったよ。
止めなきゃよかったなあって」

「未成年の喫煙は法律違反よ」

 キョンの声が近い。すぐ隣でキョンの声がした。
 横を見ると、キョンも、運動場を見下ろしていた。

 自然。それが嬉しい。
 とても自然に、俺の隣に来てくれる。

「物凄く、落ち着かなかったんだ。
キョンが、貴史ちゃんに告白してるって考えるだけで気が狂いそうだった」

 俺って、ありえないくらい恥ずかしいやつ。
 こんな告白してどうすんだよ。